秘密の地図を描こう
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「やっぱり、熱がありますよ?」
キラの手を握りながら、レイがこう言っている。
「なら、さっさと休んだ方が……」
「その前に、この前のことで二人に話をしないと」
ミゲルの言葉を遮ってキラが口を開いた。
「この前のこと?」
何だ、それは……とイザークが聞き返す。
「やっぱ、情報の出所はキラだったか」
だろうな、とディアッカは笑う。
「どうせ、また、暇つぶしにどっかのマザーを覗いてたんだろう?」
さらに付け加えれば、彼は視線を彷徨わせる。
「やっぱりな」
そんな彼の仕草が答えだ。
「方法はともかく、助かったのは事実だな」
イザークが苦笑とともにこう言う。
「おかげで対策がとりやすくなった」
無駄な労力を使わなくていい、と彼は笑った。
「なら、よかった」
キラはほっとしたような表情を作る。
「ただし、無理はするな。お前に何かあったら俺もいやだからな」
いいな、と付け加えられて、キラは小さく首を縦に振ってみせた。
「大丈夫ですよ。アカデミー内での厄介事は片付きましたから。後は、ちゃんと見張っています」
にっこりと笑ってニコルがそう言う。
「俺もできるだけそばにいます」
レイもこう言った。
「でも、これからレイは実戦訓練でアカデミーを離れることが増えるんじゃないの?」
キラが首をかしげながらそう聞き返す。
「確かに、カリキュラムを考えればそうだな」
ミゲルがうなずく。
「そうなると、俺もこいつらと一緒に出歩くことが増えるか……」
残るはニコルだけになるな、と彼は呟く。
「キラさん。ギルのところに帰っていますか?」
その方が安心できる、とレイが真顔で言った。
「僕一人では安心できないと?」
「っていうか、俺としては、お前にキラを独り占めされるのが気に入らない」
ミゲルがきっぱりという。
「レイなら、仕方がないと思えるが……お前じゃ、な」
そう言った瞬間、ミゲルが前に吹き飛ばされる。
「ミゲル?」
どうしたの? とキラが問いかけた。
「気にするな、キラ」
自業自得だ、とイザークが言う。
「そうそう。一言多いんだよ、ミゲルは」
本音を口にするにしても、とディアッカもうなずく。
「ニコルの怖さを知っているだろう?」
見た目はともかく、と彼は続けた。
「そんなに怖いですか?」
にっこりと微笑みながらニコルが聞き返してくる。
「容赦ないだろう?」
敵と認定した相手には、と言外に言う。
「当たり前じゃないですか。殺さない程度に痛めつけて差し上げるのが相手のためです」
身の程を知ってもらわないと、と彼は微笑む。だから怖いと言われているのだと彼は認識しいているのだろうか。
「でも、無理しないでね。ニコルがけがをしてもいやだから」
「わかっていますよ、キラ」
瞬時にニコルの雰囲気が柔らかくなる。
「さすがはキラ」
「否定できないな、確かに」
「キラさんですから」
そう言うと、彼らはうなずきあった。